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シンポジウム「シニアの就労を考える」(2014.9.11)活動報告

2014年10月29日

■開会挨拶/上田 研二(一般社団法人高齢者活躍支援協議会 理事長)
 私はパーキンソンのために、声が出にくいのですが、ひとこと、ご挨拶を。今日のテーマはシニアの就労を考える、ということですが、私はこれからは障害者の雇用にも力を入れていきたいと考えています。そうすることによって、21世紀を人間味あふれる社会にしていきたいのです。


第1部 基調講演

1.「改正高齢法」施行後の現状と課題を考える
   金森 道郎(イー・ナレッジ株式会社 会長)


今回の改正法の趣旨は、年金支給が先送りされた労働者の生活を確保すること。改正から1年半たち、いくつかのデータで現状をみなさんと共有したいと思います。
高齢者雇用に関しては1971年、「高齢者等の雇用の安定等に関する法律」でスタートしました。1986年の改正で定年60歳の義務化がおこなわれ、2006年からは、定年の引き上げ、継続雇用制度導入、定年の廃止のいずれかを企業が選択しなければいけないとなり、2013年からは再雇用希望者全員の雇用を義務づけました。
そして現状は、60~64歳(男)で仕事している人が72.7%、女性も47.3%です。けっこう働いてるな、という印象です。義務化以降、会社が入れた仕組みは全体的に継続雇用制度の導入が多い。特に大企業はその傾向が強く、中小は定年の引き上げが比較的多い。継続雇用者の雇用形態を見ると、中小が自社の正社員の割合が多いのに比べ、大手は自社の正社員以外の雇用が8割以上、グループ会社も活用しています。それでは継続雇用者の仕事の種類はやはり大手と中小では違いがあり、定年前と違う仕事についているのは大手が多い。企業側から見た義務化の影響では、多くの企業が総額人件費の増大を上げています。問題はモラール(やる気)が向上、低下と二つの回答があることでで、全体的にメリットも大きいが問題点もあるというのが企業側のとらえかたです。


以下は義務化以前の平成23年のデータですが、60歳以上の就労者が仕事をしている理由は、生活費をまかなうためがいちばん多く、あと生きがい、健康によい、などがつづいています。いつまで働きたいかということでは、働けるうちはいつまでも、がいちばん多く、日本人の勤勉さを表していると思います。
私は50代キャリアのライフプラン研修をおこなっていますが、研修の講師として受講者や人事部の人と話すなかでよく聞くこととして、個人からは、同じ仕事なのになぜ給料は定年前の半分なのかということだったり、周囲から煙たがられている先輩を見ていると再雇用はどうなのか、転職や郷里にもどりたいけれど、仕事があるか、という不安など。企業からは、管理職層の再雇用先がない、ということや、再雇用における一年毎の契約更新時の判断がむずかしい、などの声があります。また、10年後にはバブル期入社層が再雇用の対象になる。その対策に頭を悩ませている大手企業が大変多い。
高齢者に仕事があればいいということでなく、大事なのは活き活き働けること。そのためには、個人は自分の強みを明確にし、一般労働市場にたいする知識を持つことも必要です。企業もシニアをもっと戦略的につかう姿勢が必要。そして国や行政は、高齢者雇用に関して連携したシステムをつくり出す必要があります。


2.再雇用に向けた高齢社員の意識改革の重要性
   高平ゆかり(株式会社マイスター60 取締役事業本部長)


当社は1990年に設立した高齢者に特化した人材会社。創立以来5,500名の雇用を創出しました。2002年に職業紹介免許を取得し、65歳以上も職業紹介をはじめています。いま当社に所属する従業員は平均年齢65歳、70歳以上も約50人います。
創立以来、60歳以上の登録・求職が多かったのですが、最近、59歳以下の登録が増えています。義務化の影響です。この間、企業側からは、社内外での仕事確保やシニア社員のマネジメントなどの困難、求職者側からは再雇用後社内でいずらい、この先やっていく自信がないなどの悩みを聞いてきました。そこで当社は、後期人材育成の道筋が必要ということで定年世代の再戦力化をはかる仕組みに着手しました。それが高齢社員のための、シニアインターンシップと名づけた6カ月間の体験型意識改革研修です。2013年10月~14年3月に実験的に実施。重要なコンセプトは「教えるのではなく感じてもらう」こと。シニアは教えても聞く耳を持っていません。だから、感じてもらうことが大切なのです。仕上げは、所属会社へコミットの場とする成果報告会です。
研修の特徴はまず、2泊3日の合宿。参加者は名前も所属会社も肩書きも明かさず参加します。それによって肩書きを捨てる、自分が素になる、という体験をする。はじめて会った名前も知らない人たちが合宿1日目の夜にはすっかり打ち解けます。
次にユニークなワークショップがあります。若い人たち、それもいまの時代を象徴するような20代前半の学生、オタクっぽい若者、フリーターなどとの交流。若者が支持するマンガを一緒に見て感想を出し合う。異世代交流と異文化交流のワークショップです。また、自分の孫のような世代からフェイスブックを学ぶ講座もあり、最後に、日本マネジメント研究所理事長の戸村智憲先生による、「愛されシニアへの道」のお話でまとめます。
なぜ再雇用社員に意識改革が必要かと言いますと、企業からはシニアはつかいにくいという声が多かった。実際にわれわれが接するシニアも、態度が上から目線な人が少なくない。定年で意識を切り替えられないシニアがたくさんいます。定年退職をした夫にストレスを感じる妻が87.2%。切れるシニアも多く、駅員にたいする暴力行為は60歳以上が最も多い。また、当社の紹介で入社した人で仕事を辞める人が33.4%もいます。そのうちの94.3%が自己都合トラブルです。健康管理ができていなかったり、仕事がヒマ過ぎるなどと愚痴を言ったり。これは会社人間に多く、仕事人間には比較的少ないようです。
インターンシップ参加者の感想を読むと、研修が意識改革のきっかけになっていて、効果を実感しています。日本の豊かな高齢社会をつくるためにも、まだ、工夫の余地はあるので、さらに発展させていきたいと思っています。


第2部 パネルディスカッション
我らシニア就労応援団「シニアが活き活き働くには……」

<コーディネーター> ・金森道郎(シニアセカンドキャリア推進協会 幹事長)
<パ ネ リ ス ト>  ・大山宏((公社)全国シルバー人材センター事業協会シニアプログラム部長)
            ・塙 茂(特定非営利活動法人グランドワーク笠間 理事長)
            ・高平ゆかり(㈱マイスター60 取締役シニアビジネス事業部長)


まず、シニアの労働市場の現状・変化についてパネラーが報告。ハローワークの所長も経験した大山さんは、義務化によって「ハローワークでは55歳以上の求職者が減り、一方で65歳以上の求人や就職数が伸びている」こと、シルバー人材センター(以下「シルバー」)はここ数年、会員数や契約金額が減少しつづけていて「団塊世代も地域社会に戻って来ているはずなのに、『シルバー』に入ってこない」ことなど悩みを抱えていると話した。「我が社でも登録者数が減っている」と高平さん。2人の報告から金森さんが「義務化の影響で、64歳迄は労働市場に出なくなっているということですね」
塙さんは57歳で大手企業を早期退職し、地域のIT企業に再就職。8年勤めた経歴を持つ。人生経験談が注目を集めた。「第一ステージでは、えらくなりたい、給料もあがりたい、でやってましたから、思ったことの2分の1くらいしかやれなかった。ですからセカンドライフは、毎日楽しく仕事をしたい、と思いました」。塙さんは「自分はこの会社のために全力でがんばるけれど、ますいと思ったことはたとえオーナーであっても言わせてもらう、それで、やめろ、と言われてもけっこうです」と初日にオーナーに伝えたという。「ひじょうに楽しい8年間だった」と振り返る。現在の地域活動についても、「いまは、自分のすべての時間、すべての情熱、生きていくのに必要なお金以外はぜんぶNPOにつかっていいかな、って思ってる」と。
金森さんは塙さんに「理想的な人生を歩んでこられた」と賛辞をおくりながら、ディスカッションのテーマ、活き活き働くための条件についてパネラーに訊ねる。高平さんは「遊び心があり、自分の好きなことができていること」をあげた。そして、いわゆる「おひとりさま」のシニアが少なくない現状から、「そういう方が連絡もなくて休んだときに当社の職員が訪問して、事なきを得たことがあります。おひとりさまにとっては、働くことが社会とのつながりも太くします」と、シニア就労が持つ別な側面もつけ加えた。大山さんが日ごろ感じているのは、「『シルバー』で子育て支援や介護事業、一人暮らし高齢者の生活支援、ボランティア活動などをやっているシニアは輝いている」ということだと言う。
しかし、大山さんはつづけて、シニアの就労がいま直面している問題にも言及。「これまで『シルバー』の理念である『活き活き働いて社会をよくしていく』ことを実践できたのは、年金の裏付けがあったから。最近は国民年金だけでは食べられない、働かざるを得ない高齢者が増えてきている。シルバー会員はひとりあたり月4~5万の収入。今後はもっと稼げるようにしないといけないのかも」。実際のところ、現在。シルバー会員のほぼ3分の1は暮らしをまかなうお金を得るために登録しているという。金森さんも「大企業に勤めていた人は給与水準も高いし、一時金と企業年金で恵まれています。でも、中小でやって来た人は企業年金の恩恵がない。これは、大きな問題です」
大山さんが携わるシニア対象の技能講習は、そういった現状を見据えてのことだ。「マンション管理士、介護職などの短期の講習です。介護は体力をつかうから高齢者には向かない、という先入観が高齢者にも事業者にもあります。でも、訓練すれば、そう体力をつかわずに働けるんです。今後、労働力不足で事業所は若い人を採用できにくくなる。そういう意味では、高齢者にとっていまがチャンス。高齢者も介護の世界で働ける、キャリアアップもできるという認識を今後、広げていきたいと思っています。小さな社会実験ですが」と大山さん。
最後に、金森さんがまとめた。「高齢者が活き活きと働く条件は見えてきたと思います。自分が必要とされていること、次世代のためになっていること、精神的に満たされていることなどです」
そのあと会場から、「稼げる『シルバー』になるためにはどうしたらいいか」「団塊世代には期待できるのか」という質問や「会社人間ではなく、仕事人間をつくる仕組みが必要」「生涯現役のモデルを100万人つくることを目標にして活動している」などの意見が出て、パネルディスカッションは終了した。


■閉会挨拶/三宮 幸一(シニセカンドキャリア推進協会 理事長)
シニアを取り巻く環境が大きく変動しています。少子高齢化の進行、リーマンショック以降の景気回復に伴う人手不足、昨年施行された改正高齢法の影響、公的年金支給年齢引き上げによる問題等、大きな問題が山積しています。先ほどからのテーマである、シニアが活き活きと輝いて働くにはどうしたらいいのか、あるいは自分に相応しい職場があるのか、また企業にとっては高齢者をいかに活用し、またどのように働いてもらえばいいのかなど、いろんな心配事が出てくるわけであります。本日のシンポジウムがその問題解決の一助になれば幸いです。我々主催者は、今後もこの問題に真摯に取り組み、シニア世代の活性化、ひいては社会の活性化につなげていきたいと考えております。
本日はご参加いただき誠にありがとうございました。     (取材・文/田上正子)


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